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専門医に聞くpresented by 小豆畑病院

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05生活習慣病と合併症

山田健史先生(循環器内科、内科) 2018-3-20 Update

生活習慣の改善は、
通院しながら行うのが
おすすめです。

生活習慣の改善は、
通院しながら行うのが
おすすめです。

患者数が年々増加の一途をたどっている生活習慣病。
その代表である高血圧、糖尿病、脂質異常症などは、二つ以上を併発している患者さんも少なくありません。また、他の深刻な病気の入口になることも生活習慣病の恐ろしいところです。
今回は循環器病の治療がご専門の山田健史先生に、「心臓や脳などの重篤な病気につながっていく生活習慣病」という観点から、その予防法、治療法に関するアドバイスをうかがいました。

聞き手:相山華子(ライター)/写真:西山輝彦

CONTENTS
1
自覚症状ほぼなしの「サイレントキラー」
2
治療は医師と患者の二人三脚で

自覚症状ほぼなしの「サイレントキラー」

——

生活習慣病という「病名」だけはすっかりメジャーになりましたが、具体的にはどのような病気を指すのでしょうか?

山田

文字どおり、ふだんの生活習慣が原因となって発症する病気のことをいいます。

代表的なものは、高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などです。

いずれも、偏った食生活や運動不足、喫煙や過度の飲酒、ストレスなど、不適切な生活習慣を続けることが発症のリスクを高めます

——

自覚症状はあるのでしょうか?

山田

生活習慣病は別名「サイレントキラー」とも呼ばれます。

これらの病気は初期段階での自覚症状がほとんどないため、本人が気づかないうちに病状が進み、脳や心臓、血管などがダメージを受けてしまうケースが多くあります。

結果として、「狭心症」「心筋梗塞」「脳梗塞」など、命にかかわる重篤な病気を引き起こしてしまうことも珍しくありません。

——

生活習慣病は心臓や脳の病気にもつながっていくのですね。

山田

そうなんです。

では、高血圧、糖尿病、脂質異常症を例にその関連性を簡単にご説明いたしましょう。

 

■高血圧 =心不全や心肥大のリスクを増大

高血圧とは、血管に過度の圧力がかかっている状態をいいます。

収縮期血圧(心臓が血液を送り出すときに血管にかかる圧力)が140㎜Hg以上、あるいは拡張期血圧(全身を循環する血液が戻って心臓が拡張したときに血管にかかる圧力)が90㎜Hg以上の場合、高血圧と診断されます。

高血圧の状態が続くと血管に負担がかかるため、脳の血管が破裂する「脳出血」を起こすリスクが高まります。

また、高血圧が進むと心臓はその高い血圧を受けながら懸命に血液を送り出そうとするため、筋肉が発達し、肥大して「心肥大」になります。

心肥大が進むと心臓のポンプとしての機能が弱くなり、血液を全身に送ることが難しい状態、つまり心不全に陥るリスクが非常に高まります。

 

■糖尿病 =高血糖状態が血管を傷つけ、動脈硬化を招く

糖尿病はその原因によって4つのタイプに分けられます。

日本人に最も多いのは、血液中の血糖量をコントロールするホルモンであるインスリンが不足したり、十分に働かなくなったりして起こる2型糖尿病です。

糖尿病になって血糖値の高い状態が続くと、血管に負担がかかり傷ついてしまい、さまざまな合併症を引き起こします。

特に恐ろしいのが「動脈硬化」です。

心臓に酸素を送る冠動脈に動脈硬化が起こると、心臓に必要な酸素が行き渡らなくなる「狭心症」や、心臓の組織が死んでしまう「心筋梗塞」など命にかかわる病気を引き起こします。

また、脳の血管に動脈硬化が起こった場合も、「脳梗塞」や「脳出血」など重篤な病気のリスクが高まります。

 

■脂質異常症 =少しずつ動脈硬化が進行、重篤な病気の引き金に

脂質異常症とは、「悪玉」のLDLコレステロールや血液中の中性脂肪(トリグリセライド)が必要以上に増える、または「善玉」のHDLコレステロールが減った状態をいいます。

LDLコレステロール140mg/dL以上、HDLコレステロール40mg/dL未満、中性脂肪150mg/dL以上の場合、脂質異常症と診断されます。

脂質異常症になると、血液中で増え過ぎたLDLコレステロールが血管を傷つけ、少しずつ動脈硬化が進行し、「脳梗塞」や「心筋梗塞」など重篤な病気のリスクを高めます。

——

生活習慣病が重篤な病気の入口だということがよく分かります。

山田

しかも、これらの生活習慣病は併発することも多いんです。

たとえば、糖尿病の患者さんの多くは、高血圧と脂質異常症を同時に患っています。一つの生活習慣病が引き金となって、他の生活習慣病を誘発してしまうのです。

いずれの場合も症状が進めば進むほど治療が困難になりますので、早期発見、早期治療が非常に大切です。

——

先ほど、生活習慣病には自覚症状がほとんどないというお話がありましたが、早期発見はどうすればできるのでしょうか?

山田

まずは定期健診を確実に受け、検査結果の推移に注意することです。

検査結果の数値に少しでも変化が見られた場合は、食生活を改善する、運動量を増やす、節酒・禁煙をする、治療を受けるなど、なんらかのアクションを起こす必要があります。

「これくらいなら大丈夫だろう」と自分に甘くなってしまったり、病気が発覚する恐怖心から健診を怠ってしまったりすると、その間に病状が進行するおそれがあります。

ですから、ご自身の健康状態を常に直視して、気になることがあればすぐに病院に行ってほしいと思います。

 

(つづく)

山田健史

山田健史yamada takeshi

青燈会小豆畑病院医局長

専門

循環器内科、内科

1997年日本大学医学部を卒業、2003年同大学院を修了後、大学病院、相模原協同病院などで心不全、虚血性心疾患、不整脈などの症例を数多く担当。心臓カテーテル検査、心臓電気生理学的検査、ペースメーカー移植術なども多数経験。臨床研究を学会(シンポジウム、国際学会含む)にて発表、論文を作成。
小豆畑病院では不整脈・虚血性心疾患・心不全などの循環器疾患、慢性閉塞性肺疾患、気管支喘息などの呼吸器疾患、糖尿病・高血圧・脂質異常症・メタボリックシンドロームなどの疾患、生活習慣病の診療を担当する。

専門性に関する資格

循環器専門医(日本循環器学会認定)
認定内科医(日本内科学会認定)