病院は病気にならないために行くところ
——ひとくちに「消化器がん」といっても消化器にはさまざまな種類があります。
消化器がん全体として見れば、そこに何か共通する特徴があるのでしょうか?
富田胃がんや大腸がんに代表される消化器がんは、いずれも初期段階では自覚症状がほとんどありません。
よって、胃部不快感や排便異常などの症状に気づくころには、がんがある程度大きくなっているケースがほとんどです。
つまり、患者さん本人が早期に発見することはきわめて難しいものだといえます。
富田消化器がんの早期発見には、やはり健康診断や定期検診を欠かさないことです。
——健康診断は多くの人が年に1回程度は受けていると思いますが、それくらいの頻度でも大丈夫なのでしょうか?
富田最低でも1年に1回は必ず受けることをお勧めします。
また、勘違いされやすいのですが、検診とは職場や自治体の定期健診だけを指すのではありません。
たとえば、自分で体調に異変を感じたとき、身体に違和感があるときは、病院に行って医師に「気になるので調べてもらえませんか?」と申し出てください。医師が必要と判断した検査を受けることができます。
病院は病気になったときだけ行くところではなく、病気にならないために行く場所でもあるという認識を持っていただければと思っています。
——とはいえ、「病院に行く」というのは精神的にもスケジュール的にもなかなかハードルが高いものです。
富田そうかもしれません。
ですから、お住まいの近くに気軽に通えるかかりつけの病院を決めておくといいんです。
そして、なるべく毎回同じ医師に診てもらうことです。
——いわゆる「かかりつけ医」と呼ばれるものですね。
富田ええ。
かかりつけ医を持つことは、がんの早期発見という面でも大きな意味があります。
私にも長年診察している患者さんがいますが、いつも診ている患者さんは診察時に顔色や歩き方、目の輝きなどを見ただけで、パッと体調の変化が感じ取れるものです。
それを「医師のカン」と言ってしまえばそれまでですが、「今日は前回に比べて元気がないようだな」と思って検査した結果、がんなどの異変が見つかったケースは珍しくありません。
検査用の医療機器は日々進歩していますが、同時に「医師の目」も病気を発見する優れた“機能”を持っているのです。
ですから、かかりつけ医を探される際は、患者さんとの会話を大切にして、親身になって寄り添ってくれる主治医かどうかも考慮すべき点になってくるでしょう。
——消化器がんは初期段階ではほとんど自覚症状がないとのことでしたが、消化器のトラブルとしてはどのような症状が多いのでしょうか?
富田個人差があるので一概には言えませんが、次のような症状や検査異常が指摘されたときは、消化器に何らかのトラブルが発生している可能性があります。
速やかに医師に相談していただきたいと思います。
・胃もたれ、胃部不快感、つかえ感、胸やけなどが続いている
・胃に痛みや吐き気があり、食欲不振が続いている
・下痢や便秘が続いたり、便に血が混じっていたりする
・排便時に出血する、すっきり排便できない
・お腹が痛んだり、重たくなったりする
・食べる量は変わっていないのに体重が増加した
・特にウエスト周りの脂肪が増えた
・血糖値が高いと指摘された
・貧血や黄疸などを指摘された
・便潜血反応の陽性を指摘された
・健診で肝機能や膵機能などの異常が指摘された
・健診で脂肪肝、慢性肝炎、肝硬変などの疑いを指摘された
(つづく)