PET検査の過信は禁物
——消化器がんの疑いを検査する場合、現在はどのような方法があるのでしょうか?
富田代表的な検査法としては、「便潜血反応検査」「X線検査」「内視鏡検査」「腹部超音波検査」「腹部CT検査」などです。
対象となる臓器ごとに最適な方法が用いられます。
また、これまで内視鏡検査が困難だった小腸に対しては、小型カメラ内蔵のカプセルを飲み込んで小腸内を撮影して検査する「カプセル内視鏡検査」も行われるようになってきました。
富田まず胃X線検査を行います。
そこで異常が見つかれば、さらに内視鏡検査を行うのが一般的な流れですが、最初から内視鏡検査を行うケースもあります。
また、保険適用はありませんが、血液検査で胃がんのリスクが分かる「ABC検診」という方法も効果が認められています。
■胃X線検査
バリウムを飲んだうえでX線撮影をする検査法。医師だけでなく放射線技師による検査が可能で、比較的コストが安く、胃がんの一次検査として一般的に行われている。
■内視鏡検査
内視鏡を直接、口または鼻から挿入し、食道、胃、十二指腸などの内部を観察する検査法。いわゆる「胃カメラ」。従来の胃カメラ検査は苦痛を伴うケースが多く「もう二度と受けたくない」と思われた人も多かったが、米国で広く行われている麻酔方法を用いた内視鏡検査であれば痛みに対して安心して検査を受けることができる。
■ABC検診
血液検査によりピロリ菌に対する抗体と、胃の炎症や萎縮の度合いを反映するペプシノーゲンを測定して、その組み合わせから胃がん発生のリスクを分類して評価する。
富田一般的には、まず便潜血検査を行い、陽性反応があった場合には大腸X線検査や内視鏡検査を行うという流れになります。
■便潜血検査
採取した便に試薬を混ぜ、その変化から血液の潜入判定を行う検査。体への負担がなく簡易で費用も安価なことから、検診や初期検査に採用されている。ただし、がんが存在してもマイナス反応になってしまうこともある。
■大腸X線検査
肛門からバリウムを入れてX線撮影を行ない大腸の全体像を観察する。
■大腸内視鏡検査
内視鏡を肛門から入れて直腸・結腸(状況により小腸の一部まで)を観察する方法で、検査は10分程度の短時間で終わる。最近は大腸ポリープ(一部はがん化の可能性がある)がこの方法によって多く発見されている。
■腹部超音波検査およびCT検査
ともに優れた画像診断法で、病変を肉眼で確認して診断する。CT検査は全体像、超音波検査は局所像を明らかにすることに優れている。
——ところで、最近耳にすることが多くなった検査法に「PET検査」があります。
具体的にはどのような検査法なのでしょうか?
富田PETとは「Positron Emission Tomography(ポジトロン・エミッション・トモグラフィー)」の略です。
がん細胞が正常な細胞に比べてブドウ糖を多く取り込む性質を利用して、がんを見つけ検査する方法です。
従来の検査方法では見つかりにくかったがんも発見されやすいとされており、PET検査を導入する病院は増えています。
しかし、保険適用が限定的で、保険が適用されない場合は検査料が非常に高額になるため、誰でも簡単に受けられる検査とはいえません。
——新時代の検査法というイメージがありましたが……
富田PET検査にそういうイメージを持たれている方がいらっしゃいますが、私が危惧するのはPET検査の結果を過信されることです。
「PET検査でがんがないと分かったので、もう安心です」とおっしゃる方がいるのですがこれは大きな間違い。
たとえば、肝臓がんは腫瘍マーカーなどの血液検査、CT、超音波などを組み合わせて検査するのが一般的です。
それぞれの検査に長所と短所があるため、一つの検査だけが万能とはいえません。
PET検査でがんが見つかる可能性は100%ではありませんし、仮に1度の検査でがんが見つからなかったとしても、その後もがんに罹らないという保証はどこにもありません。
検査結果は、あくまでその検査を受けた時点での体の様子を表しているだけです。
検査結果は過信せず、やはり信頼できる医師に定期的に診療してもらうことが大切になります。
——検査でがんが見つかった場合、主にどのような治療法が採られるのでしょうか?
富田消化器がんの治療法は、がんの進行程度(ステージ)、患者さんの全身状態、併存疾患、既往症などによって異なるので一概には言えません。
ただ、主な治療法を列挙するなら「内視鏡治療」「外科的治療」「化学療法」の3つになります。
その他には「放射線療法」「免疫療法」などがあります。
■内視鏡治療
内視鏡を用いてがんを切除する治療法。開腹手術に比べて患者さんの身体への負担が軽く、入院も1~5日程度で済むケースがほとんど。内視鏡で治療できるのは原則としてリンパ節への転移がない早期がんに限られている。
■外科的治療
内視鏡によって切除できないがん、すなわちリンパ節転移を伴う早期がんや進行がんでは開腹手術が選択される。最近では腹腔鏡を用いた手術も広く行われるようになってきた。腹腔鏡手術は開腹手術に比べて身体への負担が小さく整容性(術後の見た目)に優れた手術で、食事が早く開始でき、入院期間も短縮できる。早期がんで多く行われているが、進行がんでも症例によってはこの手術を行う施設が増えている。
■化学療法
進行した消化器がんには化学療法も考慮される。化学療法には主として注射で行う方法と経口薬を使う方法があり、短期間の入院や外来通院で受けることが可能である。外科治療と併せて行われることが多く、化学療法の後に手術を行うことや、手術後に化学療法を行うこともある(「がんの化学療法」については次回掲載予定)。
富田どの治療法が適しているかは、患者さんの年齢や全身状態などから総合的に判断します。
一般的には、がんが進行すれば外科的治療もできないケースが増えてきます。
そのような事態を防ぐためにも、40歳を過ぎたら特に自覚症状がなくても年に1回の健診は必ず受けることです。
富田そのとおり。
一般外来においては信頼できる「かかりつけ医」をもつことです。
そして、食生活の改善と体重コントロールを心がけること。
先ほども申しましたが、病院というのは病気を治すことだけでなく、病気にならないようにすること、病気の進行を抑えることも大切な役割です。
健康上の不安や気がかりがあるときは、躊躇せず病院で診察を受けるようにしていただければと思っています。
(後編につづく)